心筋トロポニンとMRIで乳がんの化学療法による心毒性を予測 多施設共同研究CHECK HEART BCが進行中慢性骨髄性白血病の初診時から心血管有害事象のリスクを評価-順天堂大学医学部附属順天堂医院-

乳がん治療のキードラッグであるアドリアマイシン(ドキソルビシン)に関連する心毒性の早期診断・評価の可能性を追究する多施設共同研究が進行している。「アドリアマイシン心筋症は発症してしまうと治療は難渋することが多いが早期に評価できれば治癒可能性は高くなる」と研究を主催する国際医療福祉大学医学部循環器内科の杉村宏一郎教授(写真1)は語っている。

村宏一郎教授
  • 写真1国際医療福祉大学医学部循環器内科・杉村宏一郎教授

この臨床研究CHECK HEART BC試験は、アドリアマイシンの治療の前後で乳がん患者に心筋トロポニン検査、心臓MRI検査を行うことで、アドリアマイシンによる心毒性の発症リスクを発症よりも前に予知できるかどうかを検証することを目的にしている。国内26施設、約700人の患者が登録された。現在、データの取得を終了し、データクリーニング中で、結果は2022年の日本循環器学会学術集会で報告される予定だ。

アドリアマイシン心筋症は累積投与量依存性に発現頻度が高くなり、最終投与後から約1年における心機能低下・心不全発症頻度3~26%、心機能低下から心不全を発症した場合に70日以内に50%以上が死亡するとも報告されている。

杉村教授は「アドリアマイシン心筋症が発症すると治療困難と考えられてきたが、早期の兆候を把握し、適切な介入を行えば治療可能であることが明らかになってきた。この研究ではどのような方法でフォローアップを行うことが重要かを明らかにしたい」と語る。

本臨床研究のパイロット研究はCHECK HERAT BCにも参加する東北大学で実施されている。それによると同大学でアドリアマイシンが投与された患者の約6%が1年以内に心毒性を発症した。発症した患者の傾向として、1)投与開始3ヵ月でトロポニン値が高値となり、2)化学療法前に心臓MRI検査では心筋の浮腫や線維化を評価するためのT1 mappingによるNative T1値は延長を示すなどの所見が検出できることが示唆された。

東北大学での結果が今回の多施設共同研究で確認されれば、アドリアマイシン開始の3ヵ月時点で発症が予見できる可能性がある。発症リスクが高いと判断できれば、ACE阻害薬やβ遮断薬などの薬物療法で発症を予防あるいは別の治療レジメンを選択することが可能になる。

CHECK HEART BCのBCは乳がん(breast cancer)の略称。「この研究に続き、さまざまながん種で同様の臨床研究を計画してきたい」と杉村教授は語っている。また東北大学では患者の血液から遺伝子を含めた網羅的な解析を加えたCHECK HEART BC Omics研究を開始しており、アドリアマイシン心筋症の発症に関連する血液マーカーを探索している。