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関節リウマチの治療薬が免疫チェックポイント阻害薬に関連する心臓の合併症に有効な可能性

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Cancer Discovery誌に掲載された、Vanderbilt University Medical Center(VUMC)の研究者らの共同研究によると、通常、関節リウマチに処方される薬剤が、免疫チェックポイント阻害薬の投与を受けたがん患者が経験する稀だが死に至る可能性のある心臓の合併症治療にも有効である可能性があることが示された。

研究者らは、アバタセプトによる心筋炎の発症抑制に関して遺伝子モデルマウスで実証した。この反応は、コルチコステロイド治療で心筋の炎症を抑制できなかった後に同薬剤を投与した患者3例でも認められた。

このモデルマウスによって、本薬剤がどのように作用するかのメカニズムが明らかになった。

Vanderbilt-Ingram Cancer Center腫瘍循環器プログラムディレクターJavid Moslehi氏(MD)、MD Anderson Cancer Center免疫療法プラットフォームエグゼクティブディレクターJames Allison氏(PhD)、MD Anderson Cancer Center前博士研究員Spencer Wei氏(PhD)、VUMC医学部准教授およびVanderbilt-Ingram Cancer Center病理学・微生物学・免疫学准教授Justin Balko氏(PharmD、PhD)が研究プロジェクトを構想した。

「免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、がん治療に革命をもたらしたが、心筋炎などの免疫関連の副作用を伴い、頻度は低いものの死亡率は最大で50%に達する」と、Allison氏とともに本研究の筆頭著者であるMoslehi准教授(医学部)は述べている。

「劇症型のICI心筋炎に対する治療の選択肢はほとんどない。」

ICIは、T細胞免疫機能の負の調節因子であるCTLA-4やPD-1/PD-L1を標的とした免疫療法である。

これらの負の調節因子が阻害されると免疫系の活性化が亢進する。一部の患者では、免疫系が過剰に反応し、心筋炎を起こす。

ICI心筋炎は、2016年にMoslehi氏、Balko氏、Vanderbilt大学医学部准教授Doug Johnson氏(MD、MSci)によって最初に報告された。

そして、Moslehi氏、Balko氏、Johnson氏によって、新しい臨床症候群が解明された。

「本研究は、治療法の可能性を見出すだけでなく、なぜこの症候群が起こるのか、そのリスクのある患者を特定する方法、さらには、そもそもこの症候群が起こるのを防ぐ方法を理解するまたとない機会を与えてくれる」と、Balko氏は述べた。

ICI心筋炎をマウスで再現し、CTLA-4とPD-1の両方が心筋炎の発症に非常に重要であることを明らかにした。

さらに、アバタセプトによってCTLA-4シグナルを逆転させると、このモデルマウスでは疾患進行が止まり、死亡が減少した。

彼らの研究がメカニズム面における理論的根拠となって、臨床試験を支持している。

現在は、コルチコステロイドがICIの治療後に心筋炎を発症したがん患者に対する標準治療である。

Moslehi氏、Vanderbilt大学の前博士研究員Joe-Elie Salem氏とJohnson氏は、パリのSorbonne Universityの研究者らとともに、肺がんの66歳の女性がアバタセプトで治療を受け、コルチコステロイドが効かない重度の免疫関連心筋炎から回復したという症例報告を以前New England Journal of Medicine誌に発表した。

研究者らは、コルチコステロイドに反応しなかった別の2例のがん患者でも、アバタセプトによる治療が有効であったと述べた。

研究の著者である他のVanderbiltの研究者には、Wouter Meijers氏(MD、PhD)、Margaret Axelrod氏、Elles Screever氏、Matthew Wlenkinski氏(MS)、Bjorn Knollmann氏(MD、PhD)、Elizabeth Brunner Wescott氏、Lauren Himmel氏(DVM、PhD、DACVP)が含まれる。

本研究は、テキサスのCancer Prevention and Research、National Cancer InstituteおよびNational Institutes of Healthから支援を受けている。

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