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早期のトロポニンのモニタリングは、免疫療法関連の心筋炎の検出に役立つ可能性

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集学的研究チームは、心臓が損傷を受けた場合にのみ血中に遊出するタンパク質トロポニンを、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)による免疫療法を受けるがん患者における心筋炎の早期かつ信頼性の高い予測因子として同定した。

このレトロスペクティブな研究結果は、Journal for ImmunoTherapy of Cancer誌に掲載され、治療開始後6週間は毎週トロポニンをモニタリングすることで、がん免疫療法によるまれではあるが致命的な副作用を発見できる可能性が示唆された。

免疫療法は、とくにメラノーマなどの固形がんに対する有望ながん治療法として注目されている。ニボルマブやペムブロリズマブなど、FDAが承認した数少ない薬剤は、がん細胞を認識し攻撃するために患者の免疫システムを「強化」する、ある種の免疫療法において使われている。

ICI免疫療法により、1%未満ではあるが、心筋炎と呼ばれる致命的な心筋の炎症が起こる可能性がある。心筋炎は死亡リスクが40~50%あり、その早期発見が重要だが、このタイプのICI関連毒性を正確に予測・同定する明確な方法は今のところ存在しない。

Roswell Parkの薬理学、循環器学、腫瘍学の専門家が率いる集学的研究チームは、免疫療法患者における心筋炎をより正確に検出するために、2016~2020年までの4年間にRoswell Parkで1つ以上のICIによる治療を受けたがん患者1,001例の記録をレトロスペクティブに検証した。

研究者らは、心筋炎の予測能力を判定するために、トロポニン、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、クレアチンキナーゼなどの特定の予後バイオマーカーの重要性にとくに注目した。

また、この研究期間中、ICI治療を開始するメラノーマ患者のトロポニン値を定期的にモニタリングした。これは、これまでの研究で、ICIのイピリムマブとニボルマブの2剤併用が免疫療法関連の心筋炎リスクを高めることが指摘されているからである。

このプログラムでは、ICI免疫療法の最初の6週間は毎週患者をモニタリングし、トロポニン値の上昇や狭心症や不整脈などの心毒性の兆候がみられた患者は、心電図、心エコー図、心臓MRIなどの徹底的な評価のために腫瘍循環器学チームに紹介された。

4年間の研究期間中にICI治療を受けた1,001例の患者のうち、15例(1.5%)がICI関連の心筋炎の可能性が高い兆候を示した(11例が重症、4例が軽症)。

研究チームは、調査したすべてのバイオマーカーの中で、トロポニンが最も早く、最も信頼できる心筋炎の予測因子であることを突き止め、このタンパク質の高値がICIがん治療の初期段階における重篤な転帰と有意に関連していることを確認した。

また、トロポニン測定プログラムにより、心筋炎の早期発見、ステロイド治療の早期開始、免疫療法患者の予後が改善されたことも明らかになった。

「このようなまれな心筋炎の症例を早期に発見するだけでなく、なぜこのような毒性が発現するのか、またどのようにしてそれを予防するのかを理解することが重要である」 と、本共同研究の筆頭著者でRoswell ParkのSenior Vice President of Clinical Investigation、Chief of Melanoma、Director of the Center for Early Phase Clinical Trialsを務めるIgor Puzanov氏(MD)は述べている。

「Roswell Parkのような総合がんセンターでは、患者にとって最善の治療を提供できるよう、すべての医師の指針となる標準的な作業手順を開発することが重要である。われわれの研究結果は、この生命を脅かす症状を、最も治療可能な時期に、より効果的に早期に診断し治療するための、シンプルで積極的なアプローチを提供する。」

本研究の結果は、ICI関連の心筋炎を早期に検出する重要なステップにおける、外来患者のトロポニンのモニタリングを支持する。週1回のトロポニン値のモニタリングは、心筋炎の早期発見につながり、その結果、副腎皮質ステロイドによる早期治療が可能となり、病気の進行を食い止め、全体の転帰が改善された。

また、今回の結果は、がん免疫療法中に心臓の症状を示す患者に対して、速やかに心機能評価を行うなど、がん治療における集学的アプローチの重要性を強調している。

また、この集学的研究チームには、Cpl Associates、University at Buffalo Jacobs School of Medicine and Biomedical Sciences、University of Alabama、MD Anderson Cancer Center、National Cancer Institute、Rochester General Hospital、Dartmouth Hitchcock Medical Centerなどの研究者や臨床医が参加した。

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