心保護薬デクスラゾキサンにより、治療終了から数年後も小児がんサバイバーの心臓障害が軽減
英語オリジナル版はこちら質の高い新研究によると、心保護薬デクスラゾキサンは、小児がん患者が受けた化学療法による心臓障害を、治療終了後15年以上経過した時点でも著しく軽減することが明らかになった。
これまでの追跡期間がより短い研究を基にした本研究は、デクスラゾキサン投与により、治療後数十年にわたり、医師がサバイバーをどのように経過観察すべきかということを変える可能性を示唆した、初の大規模かつ長期的な研究である。
本研究結果は、処方に関する指針の策定に役立つだけでなく、若年患者に対するがん治療の長期的な影響について、家族や患者に一定の安心感を与えることにもつながる。
「化学療法を受けると、薬剤は体中に行き渡り、特定の部位だけに留まるわけではない。化学療法はがん細胞を死滅させるという点で大きな効果はあるが、同時に健康な細胞にもダメージを与える」と、University of Florida College of Medicine(ジャクソンビル)の外科助教であり、この新研究の筆頭著者であるErin Mobley氏(PhD)は述べた。
「特に成長期の若者においては、そうした健康な細胞には心臓も含まれる。」
Mobley氏は、Fred Hutchinson Cancer CentreのEric Chow氏(MD)やUniversity of BuffaloのSteven Lipshultz氏(MD)など、本臨床試験の当初の責任者たちと協力した。
National Institutes of HealthとChildren’s Oncology Groupから一部資金援助を受けた本研究成果は、Journal of Clinical Oncology誌に掲載された。
本研究では、小児がんサバイバー約900例を若年成人期まで追跡調査した。そのうち230例は少なくとも10年間、約200例は15年以上にわたって追跡調査が行われた。
研究者らは、さまざまな種類の白血病、リンパ腫、肉腫の治療のためにアントラサイクリン系化学療法薬の一種であるドキソルビシン投与を受けた小児患者に焦点を当てた。
がん治療の進歩にもかかわらず、治療法の半数以上に依然としてアントラサイクリン系薬剤が含まれており、この薬剤群は心臓障害と最も強く関連している。
本研究の対象患者の半数はデクスラゾキサン投与を受けた。この薬剤は、もともと化学療法を受ける成人の心臓組織保護を助けるために承認されたもので、現在では小児にも広く処方されている。
化学療法は、心臓の心腔を拡大させ、心機能を低下させ、心不全を引き起こす可能性がある。
治療から数年後に実施された心エコー検査では、デクスラゾキサン投与患者の心臓の状態は有意に健康な状態であった。
デクスラゾキサン投与を受けたサバイバーの多くは、心臓障害のリスク分類が高リスクではなく、中リスクとなった。
本分類によれば、化学療法中にデクスラゾキサン投与を受けたサバイバーは、治療終了後、より徹底的なスクリーニングを必要としない可能性があるが、スクリーニングの推奨事項を変更するにはさらなる研究が必要である。
「この効果が確認され、大多数のがん患者がこの薬剤投与を受けていることを踏まえると、患者が年齢を重ねるにつれて心エコー検査の頻度を減らすことができることが期待される。とはいえ、50代、60代のサバイバーの心血管の健康状態がどのように変化するかをより深く理解するには、引き続きこれらのサバイバーを対象とした研究を続ける必要がある」と、Mobley氏は述べた。
自身も小児がんを克服し、アントラサイクリン系薬剤による治療を受けた経験をもつMobley氏は、がんサバイバー向けのスクリーニングガイドラインを更新することに加え、このような長期研究の最大の利点の1つは、治療終了後の明るい未来を家族が想像するのに役立つことだと述べた。
「患者やその家族に、少しでも安心感を与えられる可能性がある」と、彼女は述べた。
「それが、毎日起床して、がん研究に取り組みたいと思う原動力である。がんと診断されたのが5歳であろうと95歳であろうと、がんを克服した人々の経験をより良いものにする機会を与えてくれる。」
